大阪とかで働くスタッツ厨

バスケットボールのスタッツとかが好きな人。 Run and gunが大好きなサンズファン。 懐古厨。

10年でNBAはどう変わったか ――高速化と効率化――

aoiです。

10年前からNBAはどう変化しているのか。気になったので調べました。

目次

 

 

  • NBAは高速化している

きっかけは宮地陽子さんの記事。 

リーグ全体としては少しずつ試合のペースが上がっていたのだが、この数年で、また急速にペースが上がり始めている。たとえば、昨シーズン(2016-17シーズン)のNBAだと、一番ペースが速かったネッツのペースが103.58で.平均ペースが98.73。2004-05に革新的だと言われたサンズのペースは、今ではリーグの平均値になっているのだ。

宮地陽子のスタッツ四方山話・第13回 上昇を続けるNBAの「ペース」数値-BASUCO

いやまじか。

私がNBAに一番はまっていたのが丁度04-05シーズン。ナッシュ・スタウドマイヤーを始めとするRun and Gun 全盛期のサンズをずっと見てたけど,今はそれが「平均」になっているらしい。

確かに,ここ数年NBAでスモールライナップが出始めて以来,全体的にゲーム運びが早くなっているなとは感じていた。

上記の記事で宮地さんが指摘しているように,ウォーリアーズの影響力がすごいのだろう。懐古厨のサンズファンとしては,04-05シーズンのスパーズと今のウォーリアーズが試合をしたらどっちが勝つか非常に興味があるが,この手の話題は決着がつかないので止めておこう。

今回は,過去10年で様々な指標がどう変化してきたのか見てみたい。

データ出典*1Basketball Statistics and History | Basketball-Reference.com

  • Paceの推移

さて,04-05から17‐18シーズンまでのペース推移をみてみましょう。

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 縦軸がPace,横軸がシーズン。散布図はそれぞれのシーズンにおける各チームのPece。折れ線グラフは平均を繋いだもの。

このグラフをみると,Paceは04-05から12-13まではおおむね横ばいで推移していたものの,13-14から緩やかな上昇傾向になっている。特に,15-16シーズンから伸びを高めている。

04-05のサンズのペースは95.9。一方,17‐18シーズンのリーグ平均は97.3。指標上でも,かつてのリーグ最高ペースが現在のリーグ平均になっていることが分かる。

しかも,09-10まではチーム間でバラツキが大きいが,それ以降バラツキが少なくなり,全体的に高速化していることが見て取れる。

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 リーグ平均を伸び率でみてみると,17‐18シーズンはリーグ全体で10年前から5.3%伸びている。

 Paceの伸びに伴って,平均得点も増加している。

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 縦軸は1試合当たりの得点。

15-16シーズンから伸びを高めており,Paceの動きと整合的。

  • 効率は良くなっている? 

攻撃回数が増えると,得点が伸びるのは必然だが,効率面では変化がみられるのか。

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得点効率(100Poss当たりの平均得点)をみると,チーム間でのばらつきが大きいものの,概ね横ばい圏内で推移している。

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(縦軸はTS%)

シュートの効率性をみるTS%では直近3シーズンで若干改善の傾向が見て取れる。

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(縦軸はeFG%)

同様にシュート効率をみるeFG%でみても改善している。

eFG%やTS%が伸びている原因は3P。

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(縦軸は一試合あたりの3P成功数)

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(縦軸は一試合あたりの3P試投数)

TS%は定義上,2Pよりも3Pが大きく評価されるが,近年その3P成功数が増加している。3P試投数の伸びはさらに顕著であり,リーグ全体で3Pのウェイトが高まっていることが分かる。

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 (縦軸は一試合あたりの2P試投数)

相対的に,2P試投数は年々減少している。

  • 高速化は進み,効率化は途上?

 ざっとまとめると,

①ペースは着実に高速化している。特に直近3年の伸びは目覚ましい。

②得点効率ではさほど変化は無い。ただし,3Pの隆盛によりシュート効率指標は改善している。

といったところでしょうか。

これらが進んでいる原因はルール変更のような制度的要因もあるかと思います。しかし,一番の原因はウォーリアーズやロケッツのようなチームによりリーグ全体が牽引されているためだと思います。

新しいオフェンススタイルが開発&実績を上げない限り高速化&3P多様の流れは一層強まっていくのではないでしょうか。

 

個人的には,様々なスタイルのチームがいる方が面白いと思います。

確かに,効率面で考えると,現行のスタイルがより良いです。が,あくまで今使われている指標(TS%など)でみた効率性なので,今後新たな指標等がトラッキングデータの蓄積などで開発されれば,「効率的」なバスケットボールが変化する可能性もあります。

それこそガチガチのアメリカンバスケットが「効率的」と言われる日も来る,,,かなあ。

効率面ではポストアップは非効率であると言われますが,シャックやオラジュワンのようなポストムーブも見てみたいと思います。

 

それでは。

 

 

 

 

*1:ペース等の数字が宮地さん記事中の数字と異なる。出典の相違によるものと思われる(宮地さんはNBA.COM提供データ)が,傾向を知ることが目的なので今回はBasketball-Referenceのデータを使用する。