大阪とかで働くスタッツ厨

バスケットボールのスタッツとかが好きな人。 Run and gunが大好きなサンズファン。 懐古厨。

バスケット指標の世界1―― TS% “真実の”シュートパーセンテージとは――

どうもaoiです。
このブログではバスケットボールのスタッツについてぐんぐん掘り下げながら,とりあげていきたいと思います。
今日取り上げるのはシュートの巧さをどうやって評価するかという問題です。
シュートに関するスタッツで最も分かりやすいのはFG%でしょう。ところで皆さんはFG%の定義はご存知でしょうか。言うまでもなくフィールドゴールの確率です。それではフィールドゴールってなんじゃいといいますと,ルール上,ボールがライブの状態で放たれたシュートとされています。つまりフリースロー以外の全てシュートです。ここで問題になるのがダンクもレイアップもミドルも3Pも含まれるという点です。このことから,(一般的に)バスケットの近くでプレーする選手のほうが遠くでプレーすることの多い選手よりもFG%が高くなる傾向があります。ですから,FG%とは別に3FG%が示されることが多いです。

FG%はプレイヤー共通のものさしになるか

ただし,問題もあります。例えば以下のような選手Aと選手Bではどちらがシュート巧者と言えるでしょうか。

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選手AはSG,BはCをイメージしています。FG%だけでみるとBのほうが,確率が高いものの,Aは3Pを50%で決めていますから簡単に比べることは難しそうです。 こうしたFG%に修正を加え,さらに3PとFTを考慮した指標としてTS%(True Shooting percentage)があります。TS%の算出式は以下の通りです。

 

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なお,FGA:フィールドゴール試投数,FTAフリースロー試投数 TS%はシュートの効率性を示す指標です。 少ないシュート回数&多くの得点 → 高いTS% 多くのシュート&少ない得点   → 低いTS% というようになります。 また,FG%と異なり,TS%は0から150までの値を取ります。最小値はPTS=0のときで,最大値は3Pしか打たず,その全てを決めた時になります。2Pしか打たないでその全てを決めた場合は100になります。 さて,先ほどの選手Aと選手BをTS%で比較してみましょう。TS%はそれぞれ以下の通りです。

 

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TS%で見るとBのほうが,シュート効率がよいことが分かりました。

どれだけTS%があったら望ましいのか

数値を見ても解釈に困るのでどれだけTS%があれば凄いのかNBA選手のランキングを見てみましょう。(16-17シーズン)

 

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引用元True Shooting Percent (TS%) Leaders: 2016-17 NBA Season

 

調整した指標とはいえどうしてもフロントコート陣のほうがTSが高くなる傾向があるようです。SUNSファンとしてはチャンドラーが1位なのはとても嬉しいです。(チームの現状はさておいて)。またRudy Gobertは昨シーズンの躍進がTSによく表れているように思います。

0.44

ここで様々疑問があるかと思いますが,TS%式中のフリースロー試投数の係数がどうして「0.44」なのでしょうか。実はTS%は”真のTS%”を推定して求めた数値であることが関係します。”真のTS%”は分子は共通ですが,分母の括弧内が異なります。この場合括弧内は「当該プレイヤーのオフェンス回数」です。それの近似式が,「そのプレイヤーがFGを打ったオフェンス回数+フリースローを打ったオフェンス回数」となります。ただ,誰が何回のオフェンスでシュートを打ったか数えるのは大変なのでFGAとFTAでその回数を推測しようと言う訳です。1回のオフェンスでフリースローは2投与えられることが大半ですが,3Pへのファールやバスケットカウントなど微妙にフリースロー試投数÷2と実際のオフェンス回数に誤差が生じます。NBAでは「経験的に」0.44という係数が誤差を少なることを突き止めこの係数を採用したようです(バックスのスタッフであるSeth Partnowが実際に確認したという旨のサイトがありますが,原典は見つかりませんでした。)

今回はTS%を取り上げましたがこれからもマイナーな指標を色々紹介していきたいと思います。

それでは。

追記(2017-10-4) Posessionの式において,フリースロー試投数に0.44を掛けると精度が良くなるという内容の論文を見つけました, Kubatko, J., Oliver, D., Pelton, K., and Rosenbaum, D. : A starting point for analyzing basketball statistics. Journal of Quantitative Analysis in Sports, 3 : 1‐22, 2007.

(当ブログは当初スポーツナビ+に掲載したものです。ブログの自由度の高さから移転しようと思っています。本稿はその走りとなる物です。)